"My Pure Lady" Junko Sakurada

桜田淳子出演 映画

「遺書・白い少女」




S51.04/24公開 松竹映画
「遺書・白い少女」
中村  登 監督作品

  ■スタッフ■
製  作:樋 口   清
     大 谷 信 義
企  画:相 沢 秀 禎
     (サン・ミュージック)
原  作:落 合 恵 子
     (勤文社刊)
脚  本:八 木 保太郎
監  督:中 村   登
撮  影:竹 村   博
美  術:芳 野 手 考
音楽監督:森 田 公 一
録  音:田 中 俊 夫
調  音:松 本 隆 司
照  明:飯 島   博
編  集:森   禰 成
監督助手:堀 内 幸 三
進  行:長 島 勇 三
製作主任:沼 尾   釣
スチール:金 田   正
製作宣伝:幸 田 順 平
   ■キャスト■
中原亜砂子 桜 田 淳 子

二宮 峰雄 

=田 中   健
中原 美加 =市 原 悦 子

野田 婦長 

=吉 行 和 子
髪の長い少女=大 場 久美子
マコトの母 =田 島 令 子
マコト少年 =荒 木 康一郎

二宮 康明 

=木 村   功
土屋 医師 =長 門 裕 之




















■ものがたり■

 亜砂子(桜田)がミネオ(田中)に初めて出会ったのは、かすかに夏の匂いのする五月、彼女の十九回目の誕生日の夜だった。
「誕生パーティをやり直そう」
 雑誌のさし絵画家だと名のるミネオの突然の提案で、二人は静まり返った真夜中の遊園地で、まるで子供のように遊び回った。
 亜砂子にはその時ミネオの顔が、まぶしいくらい清潔で健康そうに思えた。
ーーたぶん、わたしは今夜、淋しいから、ただそれだけのことなんだーー。
 それが亜砂子の恋のはじまりだった。
                   ×                  ×
 六月のジメジメとした不快な梅雨の夜だった。亜砂子は母親美加(市原)の経営するクラブに顔を出した。 母親は中年男と踊りながら今夜の情事の打合せをしていた。無性に腹立たしくなって表へとぴ出した亜砂子は、いつの間にかミネオのアパートヘダイヤルを回していた。
「亜砂子よ。行っていい?」
 
 その後の数週間と言うものは、二人にとって、めくるめくような愛の日々だった。
 
 ジリジリとした真夏のある日のことだった。
 ミネオは卓の前を横切る少年を助けようとして軽いケかをした。診察医はミネオに、気になることがあるから精密検査を受けるよ、つにとしきりに勧めた。
 亜砂子は一瞬不安に襲われたが、目の前の元気なミネオの姿に、すぐそれを打ち消した。
 しかし検査の結果、ミネオの入院が決まった。
 九月のある日、亜砂子は担当の土屋医師(長門)からミネオが白血病であることを知らされた。
 「白血病って死んじゃうんですか! はっきり言って下さい!」亜砂子は狂ったように医師につめよった。
 「もし、不幸にも化学療法が効かなかった時、半年か一年の命です。」医師の言葉が終るか終らないうちに亜砂子はその場で気を失っていた。
 亜砂子にとって哀しいほどつらい日々のはじまりだった。ミネオは多量の投薬によってか、しだいにやつれていったが、来年の油絵新人展に出品するのだとベッドの上でデッサンを始めた。そんな姿を見るにつけ亜砂子の胸は今にも張りさけるようだった。
 その年の終りに、ミネオの状態がよいので、一週間の退院許可が出され、二人は雪の軽井沢へ出かけた。雪の中をまるで子供のようにはしゃぎまわる、ミネオを見て亜砂子は自分の心に言い聞かせた。
 ーー彼が、白血病だなんて誰が信じるだろう。大丈夫、きっと治るーー。
 短い旅が終り、病院へ戻ったミネオの病状は悪化の一途をたどった。だがミネオは絵を描くことを止めなかった。亜砂子をモデルにした 「白い少女」の完成はま近かだった。
                   ×                  ×
 四月になった。もうミネオは昏睡状態をくり返していた。そんな時、素晴らしいニュースがやってきた。彼の絵「白い少女」が持選になったのだ。
 病院での祝賀パーティの日、亜砂子は、ささやかだが素晴しい結婚式を挙げた。
 その晩、ミネオは亜砂子と並んで寝ながら、「ありがとう」と言うと、そのまま眠るように死んだ。
                 I X X
 亜砂子は、目もさめるような新緑の軽井沢をひとり静かに歩いていた。彼の残した小さなかたみを抱きながら。
 
 
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