"My Pure Lady" Junko Sakurada

桜田淳子 対談

NHK「昼のプレゼント」(1982.09/16) 桂枝雀VS桜田淳子

 

「今まで何人かの歌い手の方とご一緒させて貰いましたけど、あんさんが一番賢いお方やと。」

 

(司会者退場して、二人きりになり)

淳子 初めてなんですか、お芝居は?

枝雀 ええ。あのう全く初めてっちゅうんでもないんですが、まあ初めてに近いですね。

淳子 ああそうですか。あのう、先程伺ったんですけど、司さんとご一緒だと。

枝雀 そうですね。

淳子 とっても優しい方で…。前にお母さん役で、ご一緒したんですけれど。

枝雀 へえ。今はねマドンナ役でね。私が思いを寄せているのにですね、どうにもならないという…。

淳子 ああそうなんですか。で収録は?

枝雀 今度で5週目位ですけど、まだね。22回位やるわけですから、まだまだ先はあるわけですが…。

淳子 歌手の人たちがね、お芝居するというのは最近よくありますけれど…。

枝雀 あなたもおやりになるでしょ?

淳子 そうですね。デビューから、もうちょこちょことやらさせて戴いているんですけれど。

枝雀 おもしろいお人だそうでんな。(笑)

淳子 私がですか?

枝雀 うんうん。(笑)

淳子 おもー(2秒程考えながら伸ばしている)しろいみたいですね。(笑)

枝雀 うんうん、ねっ。(笑)

淳子 今は多少緊張していますけど。

枝雀 ホントはおもしろいウフフ。いつものおもしろいやつをやりなはれ。

淳子 おもしろいのですか? 色々コントとか、色々やっておりますけども。

枝雀 ええええ。私も何遍か見せて貰いましたけど、おもしろいですな。

淳子 そうですか?

枝雀 うんうん、おかしいというのかね。

淳子 あのう、なんかね、人と違うっていうところがね、みんなは吹くんだそうですね。たけど私は、その役を与えられると、それが例えばおかしな役でも、真面目にね、最後まで本気になってやるのが、吹かないというのが、おもしろいって言うんですね。

枝雀 いいですね。

淳子 いいのかどうなのか分からないんですけど。

枝雀 そうなんです。吹いたら駄目なんです。難しく言いますとね、吹くと緊張がなくなるんです。笑いっていうものは、緊張の緩和、ないしは、緊張と緩和の同居ですから

淳子 よく言ってらっしゃることですねハイ。

枝雀 だからおもしろいことをやって、そこで演者そのものが笑ってしまうと、緩和で緩和になるから駄目なんですね。演者は緊張、言っていることやっていることが緩和。それでこう同居するわけです。(笑)

淳子 ハハハ。だから見てましても、それがとってもこう、手にとるように分かりますね。

枝雀 しかし、あんたはホンマに目が光ってますわね。

淳子 (小さい声で)光ってますか。

枝雀 賢いお人ですね。あのね、三年くらい前に一遍BKの方でね、一遍か二遍ね、コントのようなものでね、ご一緒させて貰いましたけど、その時の印象はね、賢い人、お子やなちゅう……。

淳子 何もやってませんでしたけど。

枝雀 いやいや表れてまんね。やるとか、やらんとかでは、おまへんねん。人間ちゅうのは、おるだけで、分かりまんのや。今まで何人かの歌い手の方とご一緒させて貰いましたけど、あんさんが一番賢いお方やと。

淳子 私ね、淳子ちゃんとか、桜田さんなんて言われたことありますけど、あんさんというのも……。(笑)

枝雀 アハハ、珍しい?(笑)

淳子 なかなか、そうですね

枝雀 ハハハ。

淳子 そういう言い方もあるんですね。ハイ。

枝雀 差し障りないでしょう、あんさんいうのはね。

淳子 そうですね。

枝雀 淳子ちゃんとね、呼ぶほどね、まだ親しくないわけやしね。私あんなん嫌いだんねん、割合そういうところちゃんとしたいねん。淳子ちゃん呼ぶようになったら淳子ちゃんらしいことしてもらわなければ困りまんねん。(笑)

淳子 どういうことしろと?(笑)

枝雀 いえいえホンマに(笑)

淳子 私は枝雀さんとお呼びしてよろしいんですか?

枝雀 そうそれでいいんです

淳子 いろいろ師匠とお呼びしたら言いのかといろいろと……

枝雀 いえそんな。それが間違いだんね。師匠でもないのに師匠と呼ばれるほどむかむかするものおまへんで。(笑)師匠ちょっと下駄とっておくんなはれっちゅうなもんでんな(笑)

淳子 (大爆笑)そういえば。

枝雀 よばれるにふさわしくなった時に呼ばれた時がやっぱり嬉しいですもんね

淳子 そうですね。

枝雀 先生とか師匠とかはね、差し障りがないからね。一々名前呼ぶとかなり親しいみたいやから。まあ便利な言葉ではありますけどね。親方とか棟梁とか先生とか師匠とかね。まあお使いになってもよろしいけど、どっかではね。私にはむかむかしますから言わないで。

淳子 枝雀さんと呼ばせていただきます。あの、お芝居の話なんです。はい。

枝雀 そうですね。私はなんの芝居の話しなくてもこうしているだけでよろしいワハハ

淳子 そうなんですか。でも私も責任感があったりしますから、お芝居の話になって、演出を色々こう……

枝雀 やられますね。やっぱり歌の方と勝手が違うからなんか言われますでしょう。

淳子 そうですね。

枝雀 どんなこと言われました?

淳子 私の場合、大体手振り身振り、なんて言うか、顔の表情からオーバーなんですね。「普通に普通に」って、9年間ずっとそれを言われて来たんですけども。それが…

枝雀 いまだに直りまへんの?

淳子 「普通に」って言われれば言われるほど、このへんに肩のへんに力が入ってですね。で、お芝居っていうのは、大体その「愛してる」とか、そういうこと言わなくちゃいけないのかって思って、構えちゃうんですね、その台詞ひとつひとつ。 

枝雀 それがすごく気恥ずかしいでしょう。

淳子 そうなんですね。

枝雀 ね、そういうお人なんです。あんさんはね。

淳子 ハハハ(笑)

枝雀 その嘘が見えるわけですよね。ここであなたのこと愛してもいないのに「愛してる」なんて気恥ずかしくて言えないわけですよ。

淳子 うーん。難しい。

枝雀 コンピュータが働くんです。アホなこと言うなっちゅうふうにね。だから賢いっちゅうことは一概にええことでもないんでっせ。世の中っちゅうのはアホにならないかんことも仰山おまんねんで。出来るだけ上向いてアハハ笑うとるのが一番でっせ。面白いから笑うんじゃないです。笑っているからおかしいんです。 

司会者 あの、あんさんと師匠。そろそろお時間でございますんで。どうもありがとうございました。

枝雀 ハハハ、そうですか。まとまった話もできませんで。

司会者 いえいえ。

枝雀 またご一緒したいと思います。

淳子 そうですね。

 



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