"My Pure Lady" Junko Sakurada

 桜田淳子 資料館

 長谷川 一夫美女才女対談13回

残念なのは初舞台を自分が見られなかったこと

ゲス卜 桜田淳子 さん

桜田淳子 (さくらだ・じゅんこ)

歌手、三十三年秋田生まれ。小学校五年のとき「お国自慢ちびっ子まねっ子コンテスト」に出演、続いて中学二年で「スター衆生」に優勝、歌手になる。デビュー曲「天使も夢みる」がヒット、山口百恵、森昌子と共に三人娘といわれた。今年十月の東京歌舞伎「お半長右衛門」のお半役で初舞台。

ええ,頻がちょっびりこけたみたいです〜

 長谷川 初舞台、なかなかよかった。ちょっとやせたみたい?

 桜 田 ほおがちょっとこけたみたいです。

 長谷川 わたしが二`減ったくらいやからね。しんどかったでしょ?

 桜 田 ええ、中日過ぎてからいくらか楽になりましたけれど、慣れるということはなかったですね。

 長谷川 淳子ちゃんの場合には慣れちゃいけないの。

 桜 田 そうですね。それにいろいろな方のお芝居を見ることがとてもお勉強になりました。

 長谷川 そうね。あなたは中学校の時、済劇部にいたんだってね。

 桜 田 そうです。

 長谷川 だから好きなんだな。きらいじゃ、ああはできない。最初は不安だった?

 桜 田 不安です。もう不安のひとことですね。

 長谷川 わかるなあ、歌の世界とはちょっとふん囲気が違ったでしょうね。

 桜 田 皆さん、お芝居にかかりきりで、一つのものに打ち込んでるという、そういう姿勢が素晴らしいと思いましたね。何か欲が出てきて、これでいいのかしらんっていう感じが今でもしています。歌の方ではどんどん新人の方がデビューしてきて、あたしがまだこんなにちっちゃいのにあたしの下にどんどん若い人が出てきますでしょ。あたしがもう先輩と呼ばれてるんですからね、早いことにびっくりするわけですね。やっぱり芸能界というところは競争社会だし、それではいけないんだけれども、どうしても目の前のことを追っかけるでしょ。そういう毎日なもんで、一カ月の間、みんなに可愛がられて、大勢の中にスポッと入って、また違う部分を見ることができたということは幸せでした。歌の世界にいると歯がゆい思いがしてならないんですね、こんなにどうして忙しいのかしらって……。決して不満でいっているんではないんです。わたしだけじゃなく歌手の皆さんって全部がそうですからねぇ。

 長谷川 舞台の世界、劇団ってのが、大分想像と違ってたようだね。お相撲さんの世界、拳闘の世界、歌の世界、音楽の世界に比べて、ぼくらのグループのほうがあんまりこれ(上下の差別)がないでしょ?

 桜 田 そうですね。

 長谷川 そう思わない?

 桜 田 思います。

 長谷川 赤裸々なこと言って?(笑)読者の方は淳子ちゃんが舞台に出て、ああいう劇団というものをどう思っただろうか、いやな面はなかったのだろうか、思ってたのとは大変違ったんじゃないかな、といったことが知りたいと思うの。それ赤裸々に言って?

 桜 田 ハイ、お世辞をいうわけじゃないんですが、先生を中心に皆さんが自分のポジションを守って、一致協力しておられる。わたしなんかにも大変神経を使って下さる。そのことに感激しました。ですから笑い話でマネジャーと言ってたんですけども「ほんとに若い人は行儀見習いになりますね」って。(笑)ホントに。

 長谷川 奉公じゃない。(笑)

 桜 田 奉公じゃないですけどネ、ほんとに一カ月の期間でたくさんのことを勉強したわけで、大変そういう意味でも幸せだなって。もちろん初舞台っていうことも勉強になりましたけれども早くから(楽屋に)入ってお化粧して、皆さんにごあいさつして、そこから始まって、また最後「お疲れさま」で終わるっていうことずっとやってきて、ほんとに勉強になったと思います。

恋人はないんです

 長谷川 ところであんたは今、世の中の男性見ててね、こういう男性がいいなとか。

 桜 田 ウフフ。

 長谷川 長右衝門みたいな年上の男はどう?恋人のような男性ってある?

 桜 田 ないんです。

 長谷川 そんなヒマないネ。

 桜 田 ヒマというのか、ウフフ。

 長谷川 学校は共学だったのでしょ?

 桜 田 中学まではそうでしたけれども………十四歳の時、秋田から東京へ来まして、それからは女子中学、高校でしょ。

 長谷川 ボーイフレンドなんかある?

 桜 田 ボーイフレンドですか−−秋田の中学のお友だちぐらいで、なかなか。

 長谷川 あっても一緒にごはんたべにいこうなんていう暇がないか。

 桜 田 そうですねえ。

 長谷川 ところで今度舞台に出ると決まった時にご両親何かおっしゃてた?

 桜 田 もう、とにかくびっくりしてました。電話でいったんですが、やはり心配なんですね、秋田と東京なんで。両親というのは芸能界というとこまったく知りませんでしょ。日ごろからこのままやっていけるのかしらって心配なんですね。だから、いつも「帰ってきなさい、帰ってきなさい」って。でも、今度の舞台の話の時だけは「じゃ、お母さん見にいくわ」って。(笑)近所の人たち−−ちょうど旅行だったので、じゃ日を合わせましょうっていうことで、秋田から見にきてくれました。両親は二度来ました。

 長谷川 それでお母さん、何とおっしゃった?

 桜 田 もう、ただ顛がほころんでるだけで……。

 長谷川 それは感慨無量なのよネ。

何か書くのが好き

 桜 田 お芝居で勉強になったことがもう一つあるんです。先生がいつも暗い芝居は絶対いやとおっしゃってたでしょ。あたしもほんとに明るさの中にペーソスのある映画とか、お芝居が大好きなんですけど、そう言っていながら中日ぐらいに先生に注意されたことがありましたでしょ。うっかりしてもう結果がわかっちゃってるお芝居をしちゃってたんですね。先生のなさってる長右衝門という男性と別れなければならないと知っているお芝居をしてしまったんです。そのことにハッと気がついて、自分は全部筋がわかっちゃってるからそういうお芝居になっちゃった。アラーッと思いましたね、ズキッと。

 長谷川 そういうこともほかのベテランならほっとくのね。でも、淳子ちゃんの場合これが身についちゃったら困ると思って注意したの。さっき言った新鮮さというのもそういうこと。慣れちゃいけないんですよ。でも、舞台の初日と、新曲歌う時と、だいぶ気分は違った?

 桜 田 達いましたね。いつもは幕が開いて、「ジュンコー」って女の子ばっかりですけど舞台は全然ファンの方が違いますし。

 長谷川 あなたのファンの方なんか見にいらして、どう言ってた?

 桜 田 女の子ですけども「とても可愛かった」って、うん。意外性っていうのありますね。

 長谷川 でも若い人だけじゃなく中年の男性、淳子ちゃん好きな人ずいぷんあるのよ。大人だからロに出さないけれど。

 桜 田 ハハハハ。

 長谷川 仕事以外で一番関心のあることって、どんなこと?

 桜 田 あたしほとんど、ズーッとお仕事でしょ。月に二、三日はお休みを頂いて、それを利用してお友だちと映画見にいくだとか、そういうことぐらいしかできないんですけれども。趣味っていえば絵を描ぐのが好きですね。でも、なかなか−−とにかく何か書いたりお芝居見たり、とにかく何か書くのが好きです。

 長谷川 将来の生活みたいなことを考えることはありますか、例えば十年後には芸能界にはいないで、だれかのお嫁さんになっているとか。

 桜 田 ウフフ、なってませんネ。

 長谷川 そんなこと考えない。

 桜 田 まだ全然考えない。

 長谷川 今、楽しい盛りなんだなァ。  桜 田 ハイ、

 長谷川 それは結構ね、それを大事にする努力よネ。みんなに可愛がってもらうということはなかなかネ、あの娘は生意気だとか、すぐ言うのよね、ちっとも生意気なことしてないんだけど、言われる。

 桜 田 そうとられやすい時期なんでしょうね。

 長谷川 これから二、三年はなおさら。

残念と友紀ちゃん

 桜 田 神経性胃炎でピリピリしてた時期がありました。

 長谷川 いつごろ?

 桜 田 デビューしてズッと、高校ぐらいまでですね。大体ちっちゃかったから、つき合う人がみんな大人の方ばっかりだから、すごく。

 長谷川 でも、そんなカゲはみじんもないからいいわね。

 桜 田 あたしは、ほんとに今いい位置にいるなァって思います。デビューして同じぐらいの歌手の人いますけれども、あたしは環境はとても恵まれてるし、また、いい仕事がいつも舞い込んでくるし、ほんとうに恵まれてると思いますね。

 長谷川 でも、赤裸々にあんたのお友だちの中で「あんた今度いいお仕事したわネ」と言う?

 桜 田 言いませんね。ちょっと上ぐらいになりますと言いますけれども、こないだ岡崎友紀ちゃんが見にきてくれたんですけど、「ほんとにうらやましいわ−」って。「よかった!」って。

 長谷川 あの娘はまた、はっきりしすぎてるから。(笑)

 桜 田 お友だちなんです。

 長谷川 あ、そう。あのはっきりしているところが舞台へ出るといいのよネ。

一回、うち(東宝歌声伎)に出る予定だったんですよ、出られなくなって。

 桜 田 言ってました、残念がってまLた。「あたしは」って。

 長谷川 だから、今考えると、だれにでも運とチャンスはあるっていうこと、そのつかみ方よね。

 桜 田 そうですね、タイミング。

やはり環境ですね

 長谷川 だから、つかみ方のうまい人がよくて、運とチャンスをはずしてる人がずいぶん世の中にいると思う。日々の生活にしても、だんなさんの言葉と奥さんの言葉が食い違うからけんかになるんでしょ、あれもチャンスですよね。裏へ回って、スッとやりなすったらケンカもせずに実にいい家庭になると思うのに、言葉が違ったばっかりに。

 桜 田 ばっかりっていうネ、ほんのちょっとしたこと。

 長谷川 ああいうことが惜しいね、人間として。

 桜 田 そうですね。

 長谷川 あんた、若いのに偉いネ、(笑) わたしなんかは年配者だから、それがわかるけど。

 桜 田 でも、同じぐらいの、今学校へいってるお友だちと比べていろいろお話してるとあたしのほうが早く社会に出てるし、おつき合いする方が多いから、自然にいろんなこと開きますからその中で。

 長谷川 そう、環境ネ、やっぱり。

 桜 田 環境ですね。大いにもまれていこうと思うんです。ですから、一般の方から見たら、芸能界っていうとこは複雑で、どうこうと言われますけども、それなら、そういう複雑な中で自分は中傷されても何されてもそのことをよく解釈していこうって思っています。そういう中でもまれながら一歩ずつ成長していこうって。自分から積極的にうわ手に回ってネ、そういうこと感じますね。

あたし泣きません

 長谷川 でしょうね。でも、デビュ−してから、やっぱり帰ってポロポロ泣いたり、譜面で顔隠して涙をふいたりしたことあるでしょう?

 桜 田 ウフフ、帰ってからですね。ただどうしても許せないことはその人の前で言いますね、あたしはっきりしてますから。でも、泣かないですね。グッとこらえてますね。(笑)

 長谷川 じゃ、今度、芝居で泣いたのは演技に泣いたわけ?(笑)

 桜 田 家へ帰ると、七つも離れてる姉がいて、全部一日あったことを話すんです。それを聞いてくれる人がいることがやっぱりいいんですね。

 長谷川 そら、いいね。

 桜 田 姉と二人で住んでるんです。うちの姉は全くこういう世界を知らないでしょ。それが逆にいいんだと思いますね。あたしが「もう、疲れたッ」って、きょうこういうことがあったって言うと、「何言ってんですか」って。そうやってしかってくれる人がいるっていうのは幸せですね。

 長谷川 淳子ちゃんなんかデビューしてから、何か人の前へ出ていかなきゃならない、一生懸命やんなきゃという努力はしたんでしょう?やっぱり。

 桜 田 ハイ。

 長谷川 簡単にいってどういうことしたの?

 桜 田 例えば皆さんスターになるんだっていうんでオーディション受けたり、大体がそうですけど、あたしの場合はほんとに好きだから、歌もお芝居も、そういう芸が好きなんですね。小さいころから好きだからただ、これで将来ズッとやっていければそれでいいんだっていう、そういう夢があって、そのようにズーッとやってきたっていう感じなんですね。だから、人よりも一歩前進していたいなっていうことじゃなくて、いつも楽しいお仕事ができればいいっていうんですね。

秋田弁の京都弁で

 長谷川 中学三年で思い切って出てきた時は不安だったでしょう。

 桜 田 そうですねえ、おじさんの家に預けられたんです。

 長谷川 親御さんも偉いよネ?

 桜 田 うちのおじさんの家が東京にあったんで、じゃ預けようっていう気になったんで、それまではずいぶん反対されました。やはり小さい娘だったから、末っ子の。

 長谷川 でも、ちゃんとした生活してるからいいのネ。うんとお金持ちか、うんと下の生活だと許さなかったろうと思う。日本人ってメンツにこだわるから。

−−秋田に帰ると、秋田弁が出ますか?

 桜 田 出ますね、ハイ。でも、イントネーションがちょっと違うぐらいで、そんなにひどくはないです。

 長谷川 舞台では京都弁がなかなか上手だったね。譜面にしるしつけるとか何とか苦労するやろなと思ったけど、割に口移しでできたから、やっぱり歌をやってるカンだよネ。

 桜 田 秋田弁の京都弁(笑)、チャキチャキの江戸っ子だったらできなかったんじゃないかしら。

 長谷川 スラスラと言わなきゃなんないところを探りながら言うからね。可愛い役やったからあの探りがとってもニュアンスになったんですよね。ところでもう成人?

 桜 田 そうです。四月で。来年一月十五日成人式。

 長谷川 ということはデビューしてもう六年?

 桜 田 そうです、六年目になります。

 長谷川 恐ろしいネ。(笑)

 桜 田 四十七年の十月二十六日の朝、東京へ出てきたんです。

きびしいお友だち

 長谷川 その時のこと覚えてる?どうでした。

 桜 田 覚えてます。お友だちに見送られて出てきたんです。そのお友だちというのが厳しいお友だちで、いざ歌手になるって言ったら、分厚い手紙を手渡してくれましてね、九月の「スター誕生」っていう番組に優勝してから十月二十六日までのわたしについて書いてあるんですが、その内容というのが、歌手になると決めてからのあなたはとても高慢ちきでどうのこうのって。でも、それではこれから芸能界でやっていけませんよって書いてあるんです。ほんとにいいお友だちがいるんですけど、それを読みながらポロポロ泣いて「ああ、あたしはほんとにこんなちっぼけな人間だったのかしら」ってシクシク、シクシク泣いて、大いに反省しましたね、そのお友だちのお手紙で。

 長谷川 夜行列車ですか。

 桜 田 そうです。映画みたいなんですけど先生がちょうど音楽の先生で、指揮をして下さって「故郷」を歌って、お別れをしたんです。ホームで。

 長谷川 そりゃ、劇的。

 桜 田 劇的なんです。

 長谷川 帰るわけにいかんネ。(笑)

 桜 田 そのお友だちの言葉はききましたね。

 長谷川 最初にそういう言葉があってよかった。

 桜 田 そうですね。いつもそのことだけ頭に残って。

 長谷川 いいお友だち持って、周囲の人もいいから淳子ちゃんもいいよネ。初舞台も成功したし……。

 桜 田 でも初舞台で、あたしがただ一つ悔しいのはネ、客席に座って見られなかったってこと。(笑)それほんとに悔しいです。

 長谷川 「淳子ちゃーん、いいよォ」って言われるたぴに「見たいわ」でしょ。

 桜 田 本当に見たかったワ。

〔一夫敬白〕東宝歌舞伎「お半長右衛門」で一カ月間、舞台を共にしましたが、気立てのいい素直な娘さんです。とてもいい性格で、からっとして、しかもがんばりやで、礼儀正しい。対談の中でもいったことですが、このまま、ずっと伸びてくれれば、すばらしい女性になることでしょう。これからもずっと外側から眺めていきたいと楽しみにしています。

次回ゲストは『歌の女王・ 美空ひばりさん』です。

※ インターネット用に見やすいように一部編集していることをご了承ください。(管理人)


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