sonoさんの『新・淳子ヒストリー』
sono.29 新シリーズ F 〜『 足長おじさん 』編〜
SONO - 04/07/17 20:14:28
コメントのタイトル: 『 足長おじさん 』
コメント:
皆様、お久しぶりです。お元気ですか。
夏季限定ヒストリー(生ものですので、早めに御読み下さい、笑)。いきまーす。
『 新・淳子ヒストリー 足長おじさん 』
私の同級生で、オカマパブを経営してる、A雄の店は日曜日がお休みです。その日を利用して、日曜の夕方、A雄と私は、馴染みの居酒屋へ繰り出しました。 オカマのA雄ちゃん、相変わらずの(超ド派手)の化粧で、その厚みは1cmほどあり、顔全体が真っ白で(スケキヨ・マスク)もびっくりです。(笑)
馴染みの居酒屋で、A雄と酌み交わす焼酎はこれまた、格別で、会話も焼酎も弾みます。
「皆、元気か〜」 と私が訪ねると
「元気過ぎて、困っちゃうわ」 と嬉しそうに答える、A雄の様子に、私も嬉しくなりまして、 「大将、焼酎、もう一本、キープね。それと、やっこと刺身追加〜」 となってしまいます。
「んで、お前の化粧だけど、どれくらい、時間かけるわけ」 と私が興味深々で訊ねると
「そうね〜。一時間くらいかな。私は化粧の時は、下塗り、中塗り、上塗りするから、時間がかかるのよね」 と驚くべき、返答でした。(笑)。
「下中上塗りって、それじや〜、化粧というより、まるでペンキ塗りやん」 と私がギャグのつもりで、返すと、
「私くらいの年齢になると、化粧も下地が重要なのよ・・・」 とマジに答えられました。(笑)。
私の冗談を本気で答えてくれる、A雄って、いったい・・・。(笑)。
会話の途中で、
「親も年だし、はやく、仲直りして、一緒に暮らしたいのよのね」
と父親を気遣う、A雄の様子に、人が背負っているものは、(重い)よりも(想い)ものだと、思いました。
「あんたは、どうなのよ?。結婚は?」 とA雄の問いに
「まあ、そのうちな〜。そん時はヨロシクな」 「あんたは、淳子命だからね〜。あんな、カワイイ人、なかなか、居ないでしょうね」
「そうなんよ。そこが、問題なんよ。淳子ちゃんだったら、明日にでも、結婚するのにな〜。笑」 と私たちの会話は、続いていきました。
そのうち、ガラガラと店の戸を開け、のれんをくぐり、相棒Tが、ある人を、伴って、来店してきました。
A雄と私のテーブルに、Tも座り、同伴の人も招き入れました。
私は、 「オヤジさん、ご無沙汰しております。お元気ですか。まあ、一杯」 と挨拶を交わしました。 続けて私が、
「オヤジさん、こいつはA雄だよ。あんたの、息子のA雄だよ。東京からこっち(地元)に帰ってきてるんよ。20年ぶりじゃろ。今、××通りでオカマパブをやっとるんよ」
A雄のオヤジさんは、A雄と分からず、びっくりした様子で、突然の再会を企てた、A雄、T、私にむかって、 「お前(T)が、突然、飲みに行こうと誘うので、変だとは思ったけれど・・・」 とすこし、困った、表情を浮かべました。
「というわけで、これは、俺と、こいつ(私)とA雄の陰謀なんですよ。」
と数日前に、A雄から、親と仲直りをしたいという、気持ちを聞かされ、相棒Tと私が、この場所をセッテングしたことをTがオヤジさんに説明すると、
オヤジさんは 「そうか・・」 と言葉少なに答えました。
「お父さん。久しぶりです。A雄です。分かりますか。元気でしたか」 とA雄が勇気を振り絞り、オヤジさんに話かけると、 「まあな」 とA雄の顔を見ずに答えました。
当時、子供のころから、天才と呼ばれ、東京の名門大学に入学も、突然中退し(オカマ)の道を選んだ、A雄に対して、オヤジさんは、当時、激怒して(親子の縁を切る)と絶縁状態から、おそらく、20年ぶりのA雄とオヤジさんの親子の再会だったと思います。 テーブルを境にして、オヤジさんはA雄と目を合わせる、様子はありませんでした。
「オヤジさん、A雄も店を経営して、立派にやっとる。お節介かもしれんが、今日は、二人の仲直りの役目を俺とTが、買ってでたんバイ。がらんで(怒らないで)くれますか」 と停滞ぎみの様子に私が先制攻撃をかけると
「ワシはA雄とは、縁を切った。もう帰るバイ」 と座を立つそぶりに
「お父さん、待って」 とA雄が、オヤジさんを引き止めましたが、それでも 「帰るバイ」 と大声になり、まわりのお客さんも、にわかにザワザワとしました。
「まあまあ、とにかく、A雄の話しだけも・・」 とTがオヤジさんを、なんとかなだめると、
「お父さん、私は、悪いこと(大学を中退し、オカマになったこと)をしたとは思っていません。でも、お父さんにずーと心配かけてきたことは、謝ります。ごめんなさい。オカマを選んだのは、私の意志だけど、今でもお父さんの息子だと思っています。一緒に暮らしてください。私と一緒に暮らしましょう。お願いします」
A雄はとぎれとぎれでも精一杯の気持ちをオヤジさんに伝えました。
「お前を、息子とは、思っておらん」 とオヤジさんの返事に予想されたこととはいえ、A雄はとても困った、様子でした。
そのうち、後ろのテーブルの客が
「○×か」 とA雄を呼び捨てにするので、振り返ってみると、私たちの高校の時の先輩でした。 数人で飲んでいました。
私は、かるく、頭をさげただけで、A雄とオヤジさんのほうに、話をもどそうとすると、その先輩たちがしつこく、話しかけてきました。
「お前、オカマになったんだってな」 とかなり酔ってるり、様子で・・・・
「おかげさまで、店もやっていますので、今度、いらしてくださいね」 と人格者のA雄らしく、先輩の悪意ある、言葉にも軽く、受け流してくれましたが、大事な時にやっかいな、先輩達の登場に私は、内心、おだやかではありません。
「お前も、相変わらずやの〜」 と今度は、私に、矛先がむけられ、
「先輩達も、お元気そうで、今日はかなり、ご機嫌ですね・・・」 と答えると 「お前に、心配してもらわんでもいいわ〜」 と指をさされ、私は 「そうですか」 と無視をきめこむと、またまた、A雄に向かって、 「○×、お前、なんで、オカマになったや」 とかなり、かん高い声に、まわりのお客さんも、こちらに注目し、A雄はうつむいたままでした。
私は、まずい雰囲気になったと思い、
「先輩、今日のところは、抑えてよ」 と私が睨みかえしたので、 「やめて」 とA雄が私の腕をつかみ、制止ましたが、その後も続く、先輩達の罵声に、私は、本来、今日の目的を忘れてしまい、
「いい加減にせいや、先輩。@p−:@””##&%’!・・・・(かなり、放送禁止用語です)」 と爆発してしまいました。
私は先輩達の酒の席とはいえ、A雄をからかった、先輩達が、許せませんでした。 A雄は、本当に立派でした。 我慢していました。 店内で騒ぎになり、回りのお客さんにも、迷惑がかかるし、元々、ここに来た目的は別のところにあるわけで、Tもそれを、心配し私を止めようしましたが、はぶれもんは、収まりません。
「ここまで、言われて、お前(A雄)は、悔しくないんか」 もはや、私は、感情を抑えることができません。 ですが、乱闘目前の雰囲気の最中なのにA雄は冷静に言いました。
「前にあんたと私の店で、20年ぶりに、会った時に、私はとっても、うれしかったのよ。 あんたと私は、同級生なのに、子供のころ、あんまり、話したことなかったでしょう。 なんか、距離があったのよね。 でも20年ぶりに会って、思ったのよ。 あのころ(小学校)と全然変わっていない、あんたがいたから。 私がオカマになったのは、20歳の時、それから、大変だったわ。 いろんな人の好奇の目、理由なしの誤解と中傷・・・。 20歳の時に多分、辛いことの大半を経験したのよ。 でも、それは、誰が良くて、誰が悪いわけでもないのよね。 この道は、自分で選んだ道だからね、でもね、近道は遠回りだったりするのよね、だから、私は現実から逃げないし、遠回りもするのよ。 そして、私は、人の誤解や中傷から、現実を受け止めて、女性として、母として、幸せな日々を送っている人を、一人知っている。 私はその人の様になりたい、その人の様に幸せになりたいのよね。」 と唇を血が出そうなくらい、強く噛み締めて、語るA雄の気高い姿が、言葉が、そこにありました。
A雄の言葉を、A雄のオヤジさんは、だまって、聞いていました。
名門大学を中退し、A雄が選んだ道は、私には、想像もつかない、苦労と我慢の日々があったのです。 その、日々が現在の素晴らしい(オカマのA雄ちゃん)をつくりあげているのです。
その間、私と先輩達の一触即発の状況は、変わっておらず、険悪な雰囲気の中
「止めろ」 と声をかけられ、私たちが、後ろを振り向きますと、見慣れた(笑)顔の人、おまわりさんが立っていました。 店のお客さんが、大事になる前に近くの交番から呼んできてくれたのです。
おまわりさんの介入で乱闘寸前で、なんとか、収まりましたが、今夜の目的(A雄とオヤジさんの仲直り)が達成されないまま、しかも、最悪の結果となり、A雄はかなり、落胆の様子でした。 私は(ごめん)と謝りましたが、A雄は苦笑いです。
乱闘騒ぎを起こし、その後、A雄、オヤジさん、T、私、先輩たちは、交番で、こってり絞られました。 「また、お前か。今回の件は、会社に連絡するぞ」 と以前から、馴染みの(笑)のおまわりさんに言われ、瞬間、会社の部長の凄〜く、怒った顔が脳裏をかすめ、
「ち、ちがいます。原因はこいつ(A雄を指差し)なんですぅ。俺は悪くないんですぅ。ホロロン〜」 と私の悪魔の裏切りに、A雄、T、オヤジさんは、呆れて、口が開いたままでした。(大笑)。 だって、怒った部長って、とっても、とっても、怖いんだも〜ん。(笑)。
交番で、しばらく、お説教(主に私だけ)を受けた、私たちが開放されたのは、夜も10時を過ぎてました。 とぼとぼと街の飲み屋街を歩く、四人でした。 「すまん、やり過ぎた。計画がだめになったな」 と私がTに謝ると、
「今度があるか、どうかは、わからんけど、また、計画の練り直しバイ」 とTがため息をつきました。
A雄とオヤジさんの仲直りという、本来の目的を忘れ、頭に血が昇り、居酒屋の店主にも迷惑をかけ、せっかくの計画をダメにした、自責の念にかられ、私がうつむき反省しながら、歩いていると、
「あれ、見ろよ」 とTが私の肩を叩きました。
いつの間にか、A雄とオヤジさんの二人は、私たちのすこし前を歩いていました。
二人が、肩を並べて、とぎれとぎれに、ぎこちない会話をしながら、歩いて行く、様子が見えました。
「こ、これって、結果オーライってやつか」 と私が興奮すると、
「そうだよな〜」 とTが答え、私とTは顔を見合わせて、笑ってしまいました。
私たちの笑い声にも、気がつかないほど、前を歩く、二人は語り合っていました。
A雄とオヤジさんの間には、すこしずつだけど、雪が解けはじめて、春が訪れる前の様な、暖かさが感じられました。
「邪魔したらわるいから、もうすこし、はなれて歩くか」 と二人の後ろを数メートルの距離をとって歩き、その様子を見ていると、街のネオンの灯りと行き交うタクシーのライトが初老のオヤジさんとその息子のA雄の肩を寄せ合う二つ影を、照らして、長く引きずります。
8頭身のオヤジさんとA雄の二つの長い影はまるで(足長おじさん)でした。
私 「なんか、気分いいから、俺とお前で、飲み直さない?」
T 「そうだな、あとは、A雄とオヤジさんの問題だし。んで、どこで、飲み直す?」
私 「やっぱ、レース・クイーンパブでしょ〜っ。ウッシッシ〜」
その瞬間、顔の筋肉がゆるみ、鼻の下が、97cm伸びた、はぶれもんの姿がありました。(大笑)。 「またなー」 と手をふりますと、私たちの前を歩く、A雄とオヤジさんが振り返りました。
そこには、ぎこちなくても、暖かい、ちょぴり照れた、親子の笑顔がありました。
オカマ、オカマと騒ぐじゃないよ
あいつは、オカマの中のオカマだぜ
あいつは、男の中の男だぜ なのです
(つづく)
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