"My Pure Lady" Junko Sakurada
桜田淳子資料館

管理人室

sonoさんの『新・淳子ヒストリー』


  sono.30  新シリーズ G
〜『 正義の味方 』編〜

SONO - 書き下ろし
コメントのタイトル: 『 正義の味方 』

コメント:

 私は高校を卒業後、県外に就職しましたが、仕事も辞め、生活のためバイトで過ご した、20代前半がありましたが、バイトの内容はというとキャバレー、スナックなど のボーイ、バーテンの夜の仕事が主ですが昼間のバイト≠烽竄閧ワした。

 私の華麗なる(笑)、バイト歴のなかでも異色のバイトがありました。

 20代前半、当時、私のバイトしていた、キャバレーは、○○観光グループの系列 で、○○観光グループはキャバレー、パチンコ店、イベント開催など、レジャー娯楽 施設、興行を複数かかえる大規模な企業でした。
  
 ある日の夏の夕方、キャバレーの店内を私が清掃していますと、主任さんが、私に声 をかけました。

 「○○君、実は、社(○○観光)の営業部の企画課に一人欠員がでてね。
 明日から一 週間ぐらい、企画課の手伝いをしてくれないか。
 詳しいことは、明日、現場で担当か ら聞いてくれ・・・」
 

 というわけで、私は翌日の朝、主任さんの指示どうりに、現場(××遊園地)に行 きますと、担当の方から説明を受けました。
真夏の遊園地は、子供さんの賑やかな声 が響いていました。
 
 「実は、明日から、この遊園地の特設ステージで、子供向けのアトラクションを予定 しているのだがね・・・」 

 担当の方の話はこうでした。
 明日からの子供向けのヒーロー戦隊ショーのメンバー がケガで欠員がでて、私に代わりに出演しろというのです。
 
 「しかしですね。
 アトラクションの大道具とかの裏方さんのバイトならともかく、舞 台に立ってのアクションシーンなどやったことありませんし、子供のころテレビで仮 面ライダーとか観ていたくらいですよ。
 私に出来ますかね〜・・」
 

と私は真夏の暑さの中で、汗をかきながら答えました。
 すでに、現地には、裏方さ んが、これまた、大汗の中、ヒーロー戦隊ショーの仮設舞台を設置中でした。
 
 「君は劇中では、悪役に捕らわれる役だから、じっとしているだけでいい。
 台詞は全 て録音を流すので簡単だよ」
 

 担当さんの説明を聞き、私自身、子供のころ仮面ライダーに憧れた時期もあり、役ど ころが正義の味方でもあり、なにより
 「バイト代、はずむよ」
の言葉に私はこのバイ トを承知しました。
 
 さて、今回私が演じる秘密戦隊ゴレンジャー≠ニはテレビの戦隊物の元祖で内容は、地球の征服を企む悪の組織、黒十字軍に敢然と立ち向かう、五人組の正義の味方で、 仮面と衣装が(赤)アカレンジャー、(青)アオレンジャー、(緑)ミドレン ジャー、(黄色)キレンジャー、(ピンク色)モモレンジャーの戦士達なのですが、 モモレンジャーは女性の戦士なのです。
   
 「あの〜ですね。それで、俺は何レンジャー役ですか?」 

と担当さんに訊ねると 

 「ケガで欠員のでた、モモレンジャーをやってもらうよ」 

 「えっ、モモってそれ、女の役でしょう、俺は男ですよ」 

と私が驚いていると 

 「大丈夫だよ。
 もともと、衣装は大きめに作ってあるし、胸と尻にパットを入れれ ば、女らしく見えるし、他のメンバーが長身だから、ちょうど、君ぐらいの身長だと バランスいいだろう。
 それに、敵に捕らわれる役だから目立たないって」


とにやりと笑う担当さんの奥歯の金歯がきらりと輝きました(笑)。
 
 「え〜、俺は女の役ですか?。出来ればアカレンジャーがいいんですけど・・」
  
と哀願する私でしたが、担当さんの金歯に押し切られ、私はケガで欠場した人の代打 で女役、モモレンジャーを演ずることになったのです。(とほほ・・)。
 
 その日は、明日からの秘密戦隊ショーの打ち合わせ、段取り、衣装合わせと続いて いきましたが、他の役柄の人やスタッフさん達との顔合わせの時に私には気になる女 性がいました。
 
 その女性は、ショーの前に子供たちに。
 「みんな、元気かなー。今日は、おねえさん と一緒にゴレンジャーを応援しよーねっ」
なんて感じの司会担当の人でした。
 
 稽古休みの昼食の時に、彼女がお茶を差し入れてくれまして、少し話す機会があり ました。
 
 彼女は私より、一歳年上で、淳子さんのような綺麗な瞳の女性でした。
 子供向けのア トラクションの公演でスタッフの皆さんと全国を巡業の旅で廻る企画会社の人でし た。
 
 私は(淳子ちゃんに似ている)と思いました。
 
 「将来は女優になりたいのよね。今は下積みだから、頑張ってなんでもやるの」 

と淳子さん似の綺麗な瞳を輝かせて語る彼女でした。
 
 「○○君は、淳子ちゃんが好きなんだ、私はビリー(ジョエル)が好き。ビリーの歌 はアメリカの景色が見えるから・・・」  

 私はさすが女優志願だけあって、言うことも詞的だと感心しました。
 
 「じゃ、明日から一週間、ヨロシクね」

 「こちらこそ」

と彼女との夢のような、会話 は終わりました。

 
 翌日、私は遊園地の特設会場に朝6時ごろ行きました。
 
 ゴレンジャーショーは一日2回の公演で、公演のあとサイン会の二部構成です。
 
 一回目の午前の部の公演は朝10時からなので、私もさっそく、衣装に着替える準備を しました。
 
 胸とお尻には女性戦士を演出するためにパットを入れましたが、ここで、問題にな るのが、私は男ですので、女性戦士を演ずるには外見上、絶対にあってはならないも のがあります。

 「やっぱり、胸と尻にパットを入れてもここが目立つから男だとバレないですか?」

と私は男性の衣装係りの人に尋ねると

「大丈夫だよ、これを使うから」

と衣装係りの人の両手には、ガーゼとガムテープが握られていました。

 「ま、まさか。それは、そ、そんなこと・・・」

 それから、数分間、舞台裏の更衣室には私の
 「うぎゃ〜、痛てて〜」
という声が響きました(笑)。

 私は、更衣室で必死にガーゼとガムテープをあってはならない部分に押さえ付けて下 腹部に貼り付けて固定し目立たないようにしました。
その間私は、
 「痛て〜。た、助けて〜」
を連発しまして、スタッフの方は大笑いしてました。

 「こんなもんで、いいですか」

と私がスタッフの確認を求めると

 「ちょっと巻き過ぎだね、まだ目立つなあ。もう少し、薄めに。出来ればガムテープ を直接さ・・・」

(直接なんか、貼れるかーっ(笑))。
 
 私は、
 「息子よ、いじめて、ごめん。暫くの辛抱だぞ」
と下半身を見つめました(笑)。
 
 なんとか、息子をガーゼとガムテープで無事に収納し(笑)、ピンクの衣装と仮面を 付けた私は、やや内股で(泣)、他の四人の戦士とともに、決めのポーズで舞台に登 場し、司会進行の彼女の掛け声でショーはスタートしました。

 途中の彼女の。
 「頑張れ、モモレンジャー」
の声が私には嬉しくてたまりませんでしたが、そのアク ションは結構ハードで、あまりの激しい動きと、真夏に衣装と仮面を付けているの で、体力の消耗が激しく途中で息が切れました。
 もうヘロヘロでした。
 
 肩で息をする、ヒーローに、お子ちゃまはさぞかし、がっかりしたでしょう(笑)。
 
 さらに、地獄の演技(笑)は続き、真夏に分厚い仮面と皮製の衣装を着けているの で仮面の中と衣装の中は洪水のような汗が流れました。

 汗で衣装が体にピッタリ貼り 付いて、しかも、収納のために使ったガーゼとガムテープが激しい動きと大量の汗で 剥がれまして、私の息子が衣装の中で踊りだしてしまいました(笑)。

 汗でピッタリと衣装が体に貼り付いているので、股間のラインもくっきりと浮かび上がり、つい に女性戦士の演出の甲斐も無く、ここに前代未聞の秘密戦隊≠ネらぬ股間の膨らん だ女戦士秘密変態 モモレンジャー≠ェ誕生したのです(大笑)。
 
 「あっ、モモレンジャー、男だ」

というお子様の声と、

 「静かにしなさい」

と笑うご父兄の声が交互に私の耳に聞こえてきました(泣)。

 私は(バレた)と思いました。
 
 だから、アカレンジャーをやりたかったのに〜(笑)。
 
 その後は、台本どうりに敵の怪人に捕えられ、残りの四戦士が私を助け出して、怪 人を退治して一件落着の予定でしたが、敵に捕えられた私とそれを盾に残りの四戦士 を窮地に追い込む怪人役の迫真の演技、さらには、司会の彼女とお子様たちの、
 「モモレン ジャー、負けるなー」
の掛け声にだんだんと、怪人役の人が憎らしくおもえてきまし て、私の正義の心(笑)が燃え上がるのでした。
 
 俺もヒーローなんだ
と思い、敵に捕らわれの役だけでは我慢できずに、な、 な、なんと私は敵の怪人役の人にキックを浴びせてしまったのです。

 会場からお子様 の
 「おー」
という歓声が沸き起こりましたが、私の台本にない、突発的な行動にゴレ ンジャーショーはしばし中断となり、事態収拾に大慌てのスタッフの方々の中で私は放心状態でした。

 それでも、なんとか皆様の演技で私の失敗を援護して頂き、ショー は終わりました。
   
 午後の部のアトラクションが始まる前に私は、自分の失敗を、皆さんにお詫びしま した。
 
 スタッフの方々からは、

 「あんまり、気にするな。まだ先は長い。頑張れ」

と逆に励まされ、私がキックして しまった、敵役の人は笑って、許してくれました。
 
 「やっちゃったわね〜」

と笑顔の司会役の彼女を見たときはもううれしいやら恥ず かしいやらで収納で使った、ガーゼとガムテープを外すのを忘れていました(笑)。
 
   下半身がヒリヒリして(笑泣)、大波乱のバイト初日をなんとか終えた私が、帰り 支度をしながら、明日からは失敗のないように頑張るゾと心に誓い、また、あの司 会の女性≠ノ逢えるなーと想いを巡らせていますと 

 「君、ちょっと」

と担当さんからよばれました。
 
 「君さ、打ち合わせにないこと、やってもらったら、困るなー(怒)。
 なんで、あんな時に台本に無いことするのかな。
 幸い、皆の演技で、観客には、バレなかったけどね。  もう明日から来なくていいからさ。
 それに、やっぱり、男が女役をするのは無理だしね。
 これ、今日の日当。
 明日から、また、あっち(キャバレー)のバイトに戻ってくれ・・」


 私は、自分の責任だし、これもやも無しと思い、担当さんの指示に従い、翌日から また、キャバレーのボーイのバイトが始まりました。
 
 数日後、私は、ゴレンジャーショーの最終日を見るために、××遊園地に行き、会 場の一番後ろで、アトラクションの開始を待ちました。
 やがて、テーマ曲に乗って、 五人の戦士が登場しました。
 私が演じた役は代わりの人(今度は多分、女性)が務め ていました。
 
 そして、五人の戦士の後に続き、司会進行役の彼女が舞台に登場しました。
 
 淳子さん似の綺麗な瞳を輝かせながら、会場の観客に向かって言いました。
 
 「ちびっ子のみんな、元気ですか〜」 

 私は、
 「元気ですよー」
と心の中で叫びました。
 
 そして、最終日のショーが終わり、彼女が次の巡業地への旅の支度を始めるのを、遠 くから確認して、私はキャバレーのバイトに向かいました。
 
 
    俺は戦う、正義のために 

     悪の陰謀、蹴散らすぞ 

     俺の名は    

     秘密戦隊モモレンジャー なのです =@

   

(つづく)





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