"My Pure Lady" Junko Sakurada
桜田淳子資料館

管理人室

sonoさんの『新・淳子ヒストリー』


  sono.35  新シリーズ L
〜『新・淳子ヒストリー ビデオ血風録V』編 @〜

SONO - 書き下ろし

 昭和50年代、時はまさに、高度成長期の真っ只中。

  Sという男が、高校を卒業後、県外に就職し、同郷のTという男とアパートで共同生活をしていた、19才のころだった。

  当時、淳子さんの主演テレビドラマ[愛の教育]を録画するために、SとTは、給料を全てつぎ込んで、録画用ビデオデッキを無謀にも現金で買った、お話は[新・淳子ヒストリー ビデオ血風録T、U]で紹介し既読の方もおられるはず。

  約25年前、録画用ビデオデッキは当時で15万円から20万円、録画用テープもかなり高価なもので、SとTの給料を合計しても20万円を越えるくらいで、その比率からしても録画用ビデオデッキなる神器は現在のパソコン以上の価値だった。

  SとTが、木曜座[愛の教育]が7月10日の午後10時から放映との情報を得たのは、放映開始1週間前のテレビの予告編だった。

  幸い、給料が月末払いだったので、Sの手元には手付かずの資金があり、
「淳子ちゃんのドラマが始まるけどさ、仕事で残業がある時なんか、見られないから、録画のためにビデオデッキを買おうと思っているんだけど・・・」
 とSが同じアパートの同居人のTに相談を持ち掛けた。

「おう、この際、思い切って、買うバイ」
 と二人の意見は一致し、もらったばかりの給料で懐の温かさも手伝い、さっそく、SとTは、ビデオデッキという当時の最新機器を購入すべく、家電店へと赴いた。

  当初、ビデオデッキの支払いは、生活費も考慮し、2人の給料を折半で出し合い、月々の分割で払うことに決めていた。

  家電店で目当てのビデオデッキコーナーを見つけ、店内にならぶ、数ある機種の中で機能性や金額、そして、分割払い可の表示などと照らし合わせ妥当とおもわれるビデオデッキをSとTは協議のうえ決定した。

「おやじさん、このビデオデッキを買いたいのですが・・」
 とSが家電店の店主を呼び伝えた。

「毎度、ありがとうございます」
 と店主はニコニコ顔だった。

「で、支払いは分割で・・」
 とSは言おうと思ったが、いざとなると、なかなか言えなかった。

  Sが言い出せないのをTが察して力を込めて、鼻息荒く言った。

「おやじさん、このビデオデッキ、現金で買うバイ。その代わりに、録画用のテープ15本をサービスしてくれよ。でないと買わないヨ」
 とTの思いもかけない、大胆発言に
「げげげ、現金」
 とSと家電店主は同時に叫んだ。

  高値のビデオデッキを分割支払いではなく、現金で買うということに、店主は大喜びだったが、Sが不安な様子をみせると
「どうにかなるって」
 とTの強気の言葉にSも何故か、納得した。

「現金でしたら、テープはサービスします」
 と店主もTの勢いに押されて答えた。

  結局、もらったばかりの給料を全てSとTは、ビデオデッキの精算に当てることになった。

  レジで現金を支払う、Tの姿は、Sにとって、頼もしく、怏怏しく、立派に見えたが、ふと、足元に視線を下ろすと、Tの足がガタガタと振るえているのがSには見えた。

  それから、Sはビデオデッキの箱を持ち、Tは録画用テープを持ち、家電店を後にした。

「これで、残業で帰りが遅くなっても、録画予約をしておけば、淳子ちゃんのドラマを見られるから、安心バイ。しかし、お前も現金払いの代わりに録画テープを15本もサービスさせるなんて、やるな〜」
 とSが尊敬の眼差しで聞くと
「かっ、かっ、かっ、これが、九州男児の心意気よ。それによ、俺もお前も今月の給料は全て無くなったけど、借金もないし、すっきりするバイ」
 と豪快に笑うTの姿にSは心地よさを感じた。

  家電製品が進化した現在、テレビ本体とビデオデッキが一体となったオールイン型が開発されたが、25年前当時は、テレビが先んじていた関係でテレビ購入後、ビデオデッキを購入し、テレビ本体に録画用ビデオデッキを接続し録画再生する外付け型が主流だった。

  アパートに到着し、さっそく、テレビにビデオデッキを接続しようと、テレビの裏を覗き込むと残念なことに旧式のため、テレビにビデオ端子が付いていなかった。

  今でこそ、テレビにビデオデッキを接続することが通例となり、接続用ビデオ端子がテレビに設置してあるが、神器と言われた頃以降の旧式のテレビには、一般家庭でテレビの画像を録画再生することが普及しておらずビデオ端子なしのテレビがかなり存在していたことをあなたは知っていただろうか。(涙)  

(つづく)




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