ようこそ!
桜姫様の忍者屋敷へ

 我らは秋田藩のやんごとなき姫様をお守りする忍びの者である。
 拙者がその支配を務める藤井長門と申す。
 以後、お見知りおかれたい。

 小さきころからよく笑い、人を笑わせ、周囲には笑いが絶えなかったことを知るものは少なくなりなり申したが、長ずるに従いその可愛らしきお姿から誰呼ぶともなく桜姫様と呼ばれて、日本中知らぬ者のおらぬ人気者となられたことは若い皆様方も聞いておろうと存ずる。
 そのお姿を見、お話をした者で、そのお人柄に惹かれない者はいないという話は決して嘘やまやかしではござらぬ。
 しかし、あの忌まわしき瓦版どものいわれなき誹謗、中傷から、誤解が誤解を招き、隠遁生活を送らざるをえなくなった姫様の心を思うとき、齢を重ねたそれがしの目が涙が浮かんだことも二度や三度ではござらぬ。
 そうした姫様の傷ついたお心をお慰めし、世間に姫様の真のお姿を知らせるための工作を任務の第一としておる者でござる。

 そのためには姫様がその昔蓄えたお宝を利用、ありていに申せば餌にしてちらつかせ、その心を動かしていく必要があるが、その在り処を知られてはならないという矛盾を抱えておるのでござる。
 お宝があることを知らせ、お姫様への世間の関心を高めつつ、そのお宝の真の在り処は決して知られてはならないという難しいお役目でござる。


 姫様が住まわれるこの屋敷には様々な仕掛けがあるによって、中には桜姫様の忍者屋敷と申す者もあるように聞いておる。
 いかにも入ろうにもどうして入ればいいのか、出るのにもどうしたら出られるのか皆目わからぬ造りになっておるのでござる。
 細かいことは仲間となった者たちが教えてくれるゆえ案ずることはないと存ずるが、大事なことはこれから仕事に就くお覚悟があるかどうかでござる。
 お役目を果たすために必要な心得を申すによって、自分がその任にあたれるかどうか自分で吟味し、自信のある者のみ誓詞、血判をしてからのみ、このお屋敷に入ることを許されると覚えられよ。
 自信なくば、さっさと帰参するがよかろうと存ずる。

忍びの者心得の条。

 一つ、忍びの者たる者、口を固く閉じ、この屋敷の中で見たお宝について、世間に触れ回ってもよいが、屋敷の場所に関しては、決して誰にも漏らさぬこと。(漏らさぬこと)

 一つ、忍びの者たる者、誰がどのようなことを申したかについて、決して漏らさぬよう心掛け、迂闊に話しても他の者に悟られぬよう、屋敷内ではそれぞれ符丁(異名)で呼び合い、別人格となって過ごすべし。(過ごすべし)

 一つ、忍びの者たる者、いかようなときにも激昂することのないよう、常に心を落ち着かせ、発言、行動すべし。(行動すべし)


 以上の3か条を守れる者と思う剛の者たちよ、屋敷に入るがいい。

誓えるわけがない。  誓えません。  誓わない。  誓わぬ。

姫様のために働くことをこの上なき喜びと存ずる。誓詞血判の上お誓い申す。

誓えない




 どこから入ればいいかわららない者に告ぐ、誓う者は誓えない者の上にあると思うべし。以上、
 これでわからぬ者は縁がなかったと思って諦めるがよろしかろう。
 又の機会があれば、お目にかかろう。さらば。



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