| ようこそ!
桜姫様の忍者屋敷へ
我らは秋田藩のやんごとなき姫様をお守りする忍びの者である。
拙者がその支配を務める藤井長門と申す。
以後、お見知りおかれたい。
小さきころからよく笑い、人を笑わせ、周囲には笑いが絶えなかったことを知るものは少なくなりなり申したが、長ずるに従いその可愛らしきお姿から誰呼ぶともなく桜姫様と呼ばれて、日本中知らぬ者のおらぬ人気者となられたことは若い皆様方も聞いておろうと存ずる。
そのお姿を見、お話をした者で、そのお人柄に惹かれない者はいないという話は決して嘘やまやかしではござらぬ。
しかし、あの忌まわしき瓦版どものいわれなき誹謗、中傷から、誤解が誤解を招き、隠遁生活を送らざるをえなくなった姫様の心を思うとき、齢を重ねたそれがしの目が涙が浮かんだことも二度や三度ではござらぬ。
そうした姫様の傷ついたお心をお慰めし、世間に姫様の真のお姿を知らせるための工作を任務の第一としておる者でござる。
そのためには姫様がその昔蓄えたお宝を利用、ありていに申せば餌にしてちらつかせ、その心を動かしていく必要があるが、その在り処を知られてはならないという矛盾を抱えておるのでござる。
お宝があることを知らせ、お姫様への世間の関心を高めつつ、そのお宝の真の在り処は決して知られてはならないという難しいお役目でござる。
|
|