"My Pure Lady" Junko Sakurada

桜田淳子エッセー

「やさしさが足りなくて」(隔月刊誌パレット連載)


 忙しい。もう一つ体があったらなァなんて思うこの頃です。映画『ストロベリー・ロード』の公開に続いて、5月30日までは東京宝塚劇場で「楡家の人々』に三女・桃子役で出演中。5月末にはシルクロードの旅をまとめた紀行本も出版予定。ともう仕事に追われっぱなし。でも独立したんだから誰にも文句いえないよネ。  

 


第3回
精一杯の精一杯のやさしさと理解
 
「淳子さん、きいてくださいよ。最近の女ときたら、すごいんですから?」
「エ? 何がすごいの?」
「僕の彼女なんですけどね。イヤ、彼女だった女なんですけどね」
「うん」
「彼女の誕生日だっていうんで、オレ、リクエストされていたルビー入りのネックレスを思いきって買ったんです」「うん、それで?」
「そしたら、その後女の誕生日の当日、レストランで待ち合わせていたにもかかわらず、これが来ないんですよ」
「エ? なんで?」
「約束をすっかり忘れちゃって、向こうの仲間と誕生会をやってたんですよ。これが……信じられねェよ」
「で? どうしちゃったの?」
「でも、僕はそんなこと知らないもんだから、待ちましたよ」
「どれぐらい?」
「5時間!」
「エー? 5時間も?」
「だって、約束ですし、あとで何言われるかわからないし、待ちましたよ」
「で? で? 結局どうなったの?」
「いくら待っても釆ないもんだから、家に帰って、もしかして、と思って、彼女に電話したんです」
「いたの?」
「エエ。で、アッ、忘れてた。ゴッメーン≠ナすょ。ジョーダンじゃないよなァ。もう、オレ、あったまにきて、それから会ってませんよ」
 
 ヤレヤレ、それはとんだことでした。
 
 ある大学生の男の子から、こんな話を開かされたが、私としたら、ただアングりと口を開けているしかないといったような内容のお話。
 たかが彼女の護生日に、ルビーのネックレスを贈る!≠ニいう話にしても、5時間も彼女を待ち続けた!≠ニいう話にしても、ちょっと私などには考えられない話で……≠ニてもついていけない。
 今どきのカップルというのは、こういう、ものなのか? と首をひねってさえしまう。
 それにしても、今どきの女性は、本当に強くたくましい!
 そして、今どきの男性のなんてやさしいことか?
 いや、やさしすぎはしないか?
 アッシー君や、メツシー君の出没で、世の女性は今、確実に強い!
(アッシー君は足=車の代わりに使うという男の子のことで、メッシー君は食事をおごってもらう男の子のことだということを、実は、つい最近知った)
 このままいけば、女性は間違いなく、思い上がりもはなはだしい、手のつけられない存在になっていくだろう!
女性が危ない!!
 アッシー君やメッシー君の出没こそが、すでに女性への黄色信号だということを、私たち女性は気づいているのだろうか?
 一体全体どういうわけで、こうも男と女の立場が逆転してしまったのだろうか?
 へんな時代だ。
男は度胸、女は愛嫡≠ニいうように(昔の人はそういった)、各々のらしさがあるはずなのに……
 やっぱり、男は強くあってほしい!
 たかが彼女に頼まれたぐらいで、高いプレゼントなどしないでほしい。
(学生なら、それ相応のプレゼントがあるはずだ)
 高い、安いではなく、ハート≠ェ肝心。
 もし、もしも、それで彼女がぶつくさと不満を並べるようなら、「ああ、所詮彼女という人は、こういう(この程度の)人間だったのだ」と理解すればいい。
 どうか、頼むから、女性の甘え≠ノ負けないでほしい。
 堂々と、自らの信念を貫いてほしい。
−とはいうものの、今の男性にとって、現状はなかなか厳しいものがあるようだ。
 ついつい、彼女の甘えに屈してしまうというのが現実のようだ。
 明治の気骨といったように、「だまって、オレについてこい」という、そんなタイプの男性など、今は必死で探しまわっても、はたして見つかるだろうか?
 女性たちの心の内はどうなんだろう?
 男性に強さ≠求めはしないんだろうか?
 子供の頃にテレビや雑誌で出会った、アニメに登場するヒーローは、絶対的に正義の見方で、強い強い存在であったし、私たちは誰しもが、そのヒーローに強いあこがれを抱いて育ってきたはずだ。
 アニメではなく、現実問題、信念と強さを携えたヒーロー≠ェ私たちの前に出現してくれることを切望してやまない。
 もしかしたら、今どきの女性たちは、本当は心の底で、ひそかにそういったヒーローを待ち望んでいるのだけれど、今は女性に甘ーい時代の中にあって、しばし楽≠させてもらおうという、魂胆!? なのかもしれない−−−−???
(この私なども、実は、その最たるものかも知れないが−−−−)男は弱くなった≠ニいいつつ、それをいいことに、だから今の男はダメね−−≠ニ、こういっているに違いないのだ。
 そういう思いこみ(弱い男という)の中で生きているから、ますます男性を隈に追いやってしまっている、ということもなきにしもあらず!
 危ない、危ない!
 女性こそ、気をつけなければ!
 女性として、男性に要求≠キるのではなく、精一杯のやさしさ理解でもって、見守ってあげることが、私たち女性に、今託されていることかも知れない−−−−。





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