"My Pure Lady" Junko Sakurada
桜田淳子資料館

管理人室

SONOさんの『新・淳子ヒストリー』


  SONO.34  新シリーズ K
軌の時代 

SONO - 書き下ろし


 [七通目のラブレター]
 18才の時から、県外での生活も、10年以上続き、姉ちゃんの他界を期に30才を越えて、生まれ育った、故郷に戻り、ようやく、落ち着いた私ですが、私にとって、難関が残されていました。
 その、難関を乗り越えなければ、故郷をまた、出て行かなければなりません。

  姉ちゃんの他界で、自堕落な生活を送る、私を心配して、相棒Tが、姉ちゃんの娘、○○子を地元の親戚に無断で、当時、私が住んでいた、県外のアパートまで連れて来てしまい、私の地元で誘拐事件騒動にまで、発展したことが、ありました。
 相棒Tにすれば、誘拐事件騒動になるとは、夢にも思わず、ただ、私のことを、心配するあまり、私を更生させるには、○○子が必要だと思ったからなのですが、結果的に、地元の警察をはじめとする、皆様に、迷惑をかけたことは事実でした。

 ○○子を、地元に送り返した、私とTに待っていたのは、地元の人の視線でした。
 誘拐騒動は、事情を警察、親戚など、あらゆる処で、お詫びをし、事情を説明したのですが、私とTの説明不足からか、地元では、私が、Tをそそのかし、○○子を誘拐させた、いわば、実行犯の主犯として私は地元の人からの視線を浴びていました。
 大人の私に対する、悪意の視線は、まだ、我慢できましたが、近所の子供までが、私を指差しながら
 「誘拐犯」
 と呼ぶ姿には、はぶれもんの私もさすがに参りました。

 「やってないから、事情を分かってもらったから、今こうして、田舎を歩けるとバイ。
 本当に主犯なら、今頃は、○の中バイ。
 身内を誘拐する、奴が何処にいる。
 がそんなことも、分からんのかいな。まったく・・・」
  と私は嘆きました。
 
 これには、私が中1から高2まで、悪たれの時期があり、その地元での実績?が、なお更、私が主犯としての印象を強くし
 「あの悪そう坊主、ついに、やったか」
   と噂が波紋のように広がっていきました。
 
 もちろん、私の悪行が招いたこの誘拐騒動。その叱責は、いくらでも、受ける覚悟で、地元に帰ってきたわけですから、私自身は、今は我慢の時だと自身に言い聞かせました。

 しかし、困ったことに、私だけなく、両親そして、心やさしき、相棒Tまで迷惑をかけたことに、私は混乱してしまいました。
 両親、相棒Tまで、及んだ、地元の人たちの悪意極まる噂の波紋。
 
 真実を知る、当事者は、逆に私をなぐさめてくれ、相棒Tにいたっては、
 「責任の所在は俺にある」
 とまで言ってくれました。
 
 もちろん、相棒Tに責任などあるわけがありません。
 私はこの難関を突破することを模索しましたが、はぶれもんの私にその策が思い浮かぶわけがなく、ただ、地元の人から、誘拐事件の主犯として、視線を受けるだけでした。
 事実を知る、親戚、同級生、地元で再就職した会社の人など、大半の人は、私に好意的で、それが、私の支えとなっておりました。

 誘拐騒動の噂の中、渦中の私は地元で働きだしました。
 仕事は順調でした。私は噂を忘れるために夢中で働きました。
 ですが、私の心の中には、やはり、何か、尾を引くものがありました。

 数ヶ月後、年も明け、正月2日に同窓会が開かれました。
 私の周辺では、依然として、噂がささやかれ、釈然としない同窓会の出席ではありましたが、せめて、同窓会は全てを忘れて、楽しもうという気持ちは相棒Tや同級生たちも同じらしく、かなり、盛り上がりました。
 
 宴の途中、同級生たちが、私やTに気を遣ってくれまして
 「気晴らしに、草野球でもやろうぜ」
   と立案してくれたのを機に、草野球チームイエロー・リボンズ≠ェ結成され、リーグ戦に突入しましたが、結局、1勝も出来ないまま、最終戦を迎え、今度は、イエローリボンズに喝を入れようとチア・ガールリボン・ギャルズ≠ェ結成され、最終戦に挑みましたが、リボンギャルズに罵声を浴びせた、相手チームと乱闘となり、試合は没収、チームはリーグを除名という、またしても地元での噂の種を作ってしまいました。
 当然、関係者を交えた、最終戦の夜の打ち上げの宴は、盛り上がりに欠ける、開始でしたが、リボンギャルズのメンバーの機転の利いた冗談で、今度は大盛り上がりをみせる打ち上げとなりました。

 その大盛り上がりをみせる宴の最中、リボンギャルズのメンバーのA子が私に言いました。

 「あんたさ、ほら、周りを見てごらん、皆、楽しそうに騒いでいるでしょう。
 他の客も一緒になって騒いでいるよね。
 あんたさ、地元の悪意の視線を気にしているみたいだけどさ、誰が、あんたのことを見ているのよ。
 この、店じゃ、あんたのことを、そんな、目で見ている人は1人もいないよ。
 みんな、知っているのよ、真実をさ。本当の事をさ。本当の事を知らない、地元の人間だけが言っている、噂なんか、真実の上に乗っかっている泡みたいなものなのよ。
 そんな、泡、ちょっと、吹けば飛んでいってしまうわよ。
 真実を知っているから、私たち、チア・ガールのメンバーは、あんた達のチームを応援してきたのよ。
 確かに、誘拐騒ぎにはなったけどさ、真実を知っている人がたくさんいることも真実なのよ。
 だから、応援できるのよ。分かる?。
 真実を知っているから、応援するのよ。
 あんたと私は同級生だから、ここまで、言うけど、他の人も同じ気持ちだよ」
 
 私は、この30才を過ぎて、ややというより、かなり、肉付きの良くなった(笑)、A子を抱きしめたくなりました。
 でも、A子の旦那さんも来ているし、なにより、その肉付きからして、抱きしめても、私の腕がA子の背中まで回らないので止めました。(大笑)。

 「だよな、そうだよな。お前の言うとおりだぜ。人の噂も、四十七士って言うもんな〜」
 
 「あ、あんたさ、し、四十七士って、それは、忠臣蔵じゃん」
 
 「えっ、ま、ま、そうとも言うかな〜」
 
 私は、彼女から、応援≠ニいうラブレターをもらいました。

 そして、季節が流れて、姉ちゃんの10年忌の時、姉ちゃんの人柄でしょうか、150人を越える、人が参加し、姉ちゃんの娘の○○子の歌う『リップステック』に「ファイト! 淳子!」の大合唱が起こりました。
 姉ちゃんと○○子は、この日、声援≠ニいうラブレターをもらいました。
 はぶれもん、軌の時代。私、30才から40才の時でした。
  

   声を限りに、叫ぶ声援 

    胸に秘めて、祈る応援

    真実という願いなのです 
  
    

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