"My Pure Lady" Junko Sakurada
桜田淳子資料館

管理人室

SONOさんの『新・淳子ヒストリー』


  SONO.34  新シリーズ K
転の時代

SONO - 書き下ろし


 [八通目のラブレター]
 現在、姉ちゃんの残してくれた天使は高校3年生となりました。
 少し、遠回りもありましたが、順調に育ってくれました。
 ここまでくると、奇跡のようなもので、他界した姉ちゃんと娘○○子の顔は瓜二つで、○○子を見ていますと、姉ちゃんを思い出します。
 私の淳子さんへの想いが、○○子にも伝授され、今では、○○子も淳子さんに夢中になり、○○子のカラオケで歌う、『リップステック』は私の楽しみでもあります。

 ある日のことです。
 ○○子にある事件がおこりました。
 ○○子は、ネット上で、ある女性と知り合いました。
 もちろん、ネット上のお付き合いですので、お互いに名前も知りませんし、顔も知りません。
 毎日の出来事をパソコンでメールをやり取りする、日々を重ねていきました。
 その内、メールをやり取りする間に、○○子は自分の身の上を女性に話しました。
 4才の時に、母親が白○病で、他界したこと、父親とは事情があって、離れて暮らしていること、今、女子校生であること・・・。
 そして、○○子は、その女性が他界した自分の母親と同世代であることを知ります。
 いつしか、○○子はネット上ではありますが、メールのおかあさん≠ニその女性を心から信頼し、慕うようになります。
 ○○子にとっては、辛い時には、相談に乗ってもらい、楽しいこと、日常のなんでも話せる、おかあさんみたいな、存在になっていました。
 メールのやり取りをするうち、○○子は、その女性の御優しさにふれ、以前にも増して、明るくなりました。1人の女性によって、○○子が、活き活きと脈打つ女性へと変身を遂げていったのです。
 その女性のことを、私に話す時の○○子の表情は、まさに、天使の微笑み≠ナす。

 ある日、○○子の帰宅が遅くなりました。
 いくら部活でも、夜の7時頃には帰宅をするのに、9時を過ぎても帰宅せず、私は心配になり、○○子の携帯に発信しても、電源を切ったままで・・・。
 ○○子の友達に連絡しても、夕方、別れたきりらしく・・・。
 ようやく、家の玄関に○○子の原チャリのマフラー音が聞こえました。

 「お前、遅かったな、どこに行っていたんや?
 心配したぞ」

 と私が出迎えると
 「ちょっと・・ね」
 と○○子のそっけない返事に私は、今まで帰りを待っていた、感情が爆発してしまい

 「お前な、高校生のくせに、その態度はなんか。
 遅くなった、理由をちゃんと俺やおやじ達に説明しろ。
 皆に心配かけているんだからな。
 そんなことじゃ、どうしようもないぜ。
 お前、反省しろ。(怒)」


 「別にちょっと用事でね・・・」

 ○○子の煮え切らない返事に私は
 「お前さ、姉ちゃん(○○子の母親)が天国で泣いているぞ。
 姉ちゃんに謝れ」


 さすがに、姉ちゃんまで持ち出してしまったのは、まずかったと思いましたが、いつもの、はぶれもんの(行きがかり上で失敗、反省)の性格は直らずの暴言でした。
 私の両親も私と○○子の玄関先のやり取りを心配そうに見ておりましたが、その内、母親が
 「まあ、まあ、無事だし、今日はもう遅いしね。
 ○○子ちゃん、ご飯食べたら。
 あんたはちょっと、言い過ぎよ」

 とかなり○○子に、甘い言葉に、今度は、私の母親に爆発してしまいました。

 「かあちゃん、ホントに、甘いわ。
 ○○子に甘過ぎなんだよ。
 親なら、ちがうこと言うぜ」


 はぶれもんの暴言ここに極まれり≠ニ、もはや止まりません。

 「兄ちゃん、おばさんを悪く言わんで。
 兄ちゃんの大切な、おかあさんじゃないの。
 心配をかけた、私が悪いんだから。
 私が今日、遅くなったのは、空港に行っていたからなんよ。
 空港で飛行機が飛び立つのを眺めていたから家に帰るのが遅くなったの。ごめんね」

 と○○子が居ても立ってもいられなくて、口を開くと

 「は〜。く、空港。飛行機。
 お前にそんな趣味があったんかよ。
 デタラメぬかすな(怒)」

 と私は声を荒げて叫びました。

 「本当よ。おかあさんに逢いたかったんよ。
 おかあさんが、メールのおかあさんが、××方面の人だから、××行きの飛行機に乗ったら、逢えるかもしれないと思っ たから、だから・・・。
 でも、切符買うお金が無かったから、だから、飛行機に乗れなくて、でも、逢いたかったから・・。
 だから、ずーと、空港で飛行機を デッキから眺めていたのよ。だから、だから・・・」


 ○○子の涙ながらの、真実の告白に私は、愕然としました。

 「お前、逢うって、相手の住所も知らないのに、名前さえ知らないのに、そんな無茶な・・」

 「飛行機に乗ったら、××まで行ったら、メールのおかあさんに、逢える気がしたし、逢えなくても、同じ場所に居たかった・・・。
 でも、いろいろ考えて、やっぱり、いろんな人に心配をけるし・・」

 と○○子は帰宅が遅れた理由をすべて、打ち明けてくれました。
 
 ○○子は、幼い時に、母親を亡くし、母親に甘えたくても、そうできない現実と愛しさの狭間で葛藤を続けていたのです。
 そして、○○子は、ネット上のメールのおかあさん≠ニ他界した母親を、知らず知らずのうちに、重ね合わせていたのです。
 いつしか、○○子は、名前も知らない、住所さえ知らない、メールのおかあさんに逢いたいと思うようになっていたのです。
 その、淡い想いが、○○子を空港へと行かせたのです。
 
 私は○○子の清らかで、純粋で、正直な気持ちを知らず、ただ、自分の怒りを○○子に、ただ、自分の満足のために、ぶつけていた、だけだったのです。
 私は○○子とメール相手の女性の方との心が通い合う、ラブレターのやり取りの気高さ、メールのやり取りという、堅い絆のラブレターの交信。
 それを発信してくれる、女性のやさしさに、私はなにも知らず、ただ、自分勝手な怒りをぶちまけていただけなのです。
 はぶれもんはやっぱり、はぶれもんだったのです。
 なにより、○○子が無事で帰ってきたことを、喜ぶべきで、今の○○子に、これ以上なにも、求めてもいけない。
 メールのおかあさんに逢いたくて、空港まで行ったけれど、直前で、自分を抑えて、ちゃんと、帰ってきたではないのか、いろんな人を思いやり、誰か悲しむかを考え、そんな自分の行動の良し悪しを判断する、心をだれが、教えてくれたのか。
 それは、間違いなく、○○子がメールのおかあさん≠ニ呼ぶその人なのです
 ○○子にラブレターを送り続けていただいた、心やさしき、その人なのです。

 数日たって、私のお門違いのメールにも、やさしく、答えていただき、改めてメールのおかあさん≠フ純粋さに感動しました。
 メールのおかあさん≠フ言葉に、人と人とのつながりは、あたえ過ぎず、求め過ぎないことが、大切なことだと、教えられました。
 人は、誰でも自分自身が大切です。
 生きていくために、まず自分を大事にします。
 でも、自分を大切にすると、時に、人にやさしくなれる自分に出逢います。
 それは、自分自身が在るのは、自分の存在を認めてくれる人がいるから、1人で生きていくためには、たくさんの人が自分自身を見守っていてくれるから、1人で生きていくためには、大勢の人の力が必要だから、そのことに、気が付いた時、人は、やさしくなれるのだと思います。
 1人で生きていくためには、自分の存在を認めてくれる誰かと背中合わせに生きていることに気が付くからです。
 人が1人で生きていく≠アとは、人は1人では生きられない≠アとに気が付くことから始まるのです。

 「○○子、最近、メールのおかあさんと話しているか?」

 数日たった、ある日、私は尋ねてみました。

 「気になる〜のぉ。もう、バッチリコンよ。
 焼き餅、焼かないでよ〜、兄ちゃん。うふふ」


 昨日より今日、今日より明日、メールのおかあさんのラブレターで、またひとつ、生き甲斐を知った、○○子でした。
 私には、聞こえます。天国の姉ちゃんからのメールのおかあさんへのラブレターが

 『メールのおかあさん様、お元気ですか。
 いつも、娘の○○子が御世話になっております。
 おかげ様で、娘も高校を卒業できます。ありがとうございます。
 ○○子は、気の強いところがありますし、反面、大変な泣き虫ですが、根は優しい、素直な娘です。
 これからも、娘が、御迷惑をおかけすることが、多々、あると思いますが、御気長に娘のことを、御指導くださりますよう、これからも宜しくお願い致します。
 私には、もう一人、気になる弟がおりますが、御迷惑でしょうが宜しくお願い致します。
 メールのおかあさん様には、御体に御気を付けられまして、日々、お過ごし下さい。
 それでは、失礼致します。
   メールのおかあさん様へ   ○○子の母より』

 はぶれもん、転の時代。私43才、○○子、18才の時でした。
  

  「私を子供あつかいしないでよ、もう大人よ」

   「私、まだ子供だから、わかんな〜い」

    日替わりの大人と子供。どっちも、あいつ自身なのです 
  
  

(次へ)




 戻 る 

inserted by FC2 system