"My Pure Lady" Junko Sakurada
桜田淳子資料館

管理人室

sonoさんの『新・淳子ヒストリー』


  sono.35  新シリーズ L
〜『新・淳子ヒストリー ビデオ血風録V』編 D〜

SONO - 書き下ろし

 次に2人がとった行動は、近くに住む、友人達のアパートに行き、晩御飯を食べ歩く、作戦だった。

  幸い、木曜日は[愛の教育]を録画する必須の目的があり、2人のテレビはビデオ端子の付いてない、テレビのため、給料を全額叩いて購入した、ビデオデッキは友人のアパートのテレビに、接続し常設状態なので、友人のアパートに夕食時を見計らって行き、御飯を食べ、お風呂にも入れ、録画も出来るという、一石三鳥だった。

  それでも、その友人に木曜日以外に御世話になるのは、気が引ける2人は、他の日は、別の友人のアパートに乱入しては、食べられるものはなんでも食べ、2人は、まるで、アラレちゃんに出てくるガッちゃんみたいな存在として、友人達から、恐れられ、そのうち、友人達のアパートを訪ねても、灯りが消えていて、2人の外食グルメツアー大作戦≠10日で終了した。

  給料日まで、1週間を残し、大作戦の迷案も尽き、2人は、いよいよ、困り果てた。

「おい、どうする」
 とSは、アパートでTに相談した。

「あれ、食ってみるか」
 とTが指差したものは、台所の棚に置かれている、1個の物体だった。

「えっ、あれ、食うの?」
 とSは、恐る恐るTの指差した物体を見つめた。

  その物体とは、確か原型は玉ねぎだったが、冷蔵庫に3ヶ月ぐらいねかせていて、水分がなくなり今では、手の平ぐらいに、収縮乾燥し、しかも、黒い芽のようなものが、2本、出ている謎の物体だった。

  Sが尻込みをしていると、Tが勇気を奮って、棚に置かれている物体を手に取り、食べようと握り締めた瞬間、その物体はTの手の中でバリッと音をたてて、粉々に崩れ、砂のようになり、Tの手の中から、サラサラとこぼれ落ちた。

  床に落ちた、砂流状の物体を見てSが
「どう、食える?」
 と訊ねると
「く、食えない」
 と涙を溜め、答えるTだった。

「そ、そうか、食えないか」
 とSも涙を流した。

  Sは、この悲惨な状況下、一句浮かんだ。

  [玉ねぎ君、砂になってしまったね]  

(つづく)




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